早期発見、早期治療は、腫瘍や感染症をはじめとする疾患に対する基本原則です。ところが、不正咬合に関していえば、早期発見はともかく、早期治療あるいは早期介入の是非については必ずしも明確な答えが得られていません。
以下に私たちが提唱する診療ガイドラインにみる治療のタイミングについてご説明いたします。
2004 菅原
このガイドラインの特徴は、上あごと下あごの不調和の程度に応じて矯正治療のタイミングを定めることにあります。上あごと下あごの不調和の程度は、レントゲン検査を受けることにより正確な診断が得られます。
上あごと下あごの不調和が軽度〜中等度の方は、二段階の治療の概念に基づいて少年少女期における早期治療(第1期治療)と、思春期後期以降における晩期治療(第2期治療)とに明確に分離した治療をおすすめしています。第1期治療開始のタイミングは上下永久前歯4本が完全萌出する時期を原則とし、第2期治療開始のタイミングはあごの成長(顎骨成長)がおおむね終息する思春期以降を原則としています。
一方、重度の不調和が認められる方には、先の見えない治療を避けるために、原則として第1期治療は行わず、顎骨成長が終るのを待って、思春期後期以降に晩期治療(外科矯正治療)を適用することをおすすめしています。
また、中学時代に相当する思春期は心身の変動が著しく、受験勉強などの社会環境も少なからず心理的負担を及ぼす要因になっていることと、保護者の目も行き届かなくなるため、一般的には矯正治療への協力度が低下し、頻回の食事に伴ってむし歯になりやすくなる時期でもあります。この時期における矯正治療は旺盛な成長を利用できるというメリット以上に、往々としてリスクの方が高いと考えられます。ですから、思春期性最大成長に相当する中学生の時期は矯正治療を避けることをおすすめしています。
すべての患者さんに良好な結果を確実にもたらすために、患者さんに応じて早期治療と晩期治療を適切に組み合わせることによって、それぞれの利点を最大限に利用し、それぞれの欠点を最小限に抑えます。
つづいて、具体的には、どのような歯並びが危険性の高い不正咬合であるかご説明いたします。





不正咬合のリスクの高さは、矯正治療の緊急度が高いと言い換えることもできますが、それは見た目のひどさとは必ずしも一致しません。たとえば、明らかにひどいような反対咬合であっても、上述したような問題点が伴わない場合には、治療の必要性があるにしても、必ずしも緊急度が高いとはいえません。一度、矯正歯科専門医でのレントゲン検査を受けられることをおすすめいたします。
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