外科的矯正は通常の矯正治療に、あごの骨を手術で切り離して移動する外科治療(顎矯正手術)を併用した矯正治療を指します。不正咬合と矯正治療の項目でも述べましたが、受け口(下顎前突)や出っ歯(上顎前突)のなかでも、あごのずれがとても大きく、歯だけを移動する通常の矯正治療だけでは充分な治療結果が期待できない場合や、あごの左右へのずれによって顔がゆがんで非対称になっているような場合に適用されます。このような外科的矯正を必要とする患者さんを顎変形症(がくへんけいしょう)と総称していますが、特殊な場合を除いて、一般的には健康保険の適応となります。 顎矯正手術には2〜3週間の入院と全身麻酔が必要です。手術はすべて口内法(口の中からの手術)で行いますので、顔に傷跡が残ることはありません。
外科的矯正治療のステップ
外科的矯正は顎矯正手術だけで最終目標を達成することはできないので、術前・術後矯正と呼ばれている矯正治療と併せて行われます。治療のステップおよびそれぞれに要する治療期間は、症状の程度によって異なりますが、おおむね以下のようになります。
・術前矯正(1〜2年)
顎矯正手術を行った直後に、しっかりとした噛み合わせになるように、マルチブラケット装置を用いて歯並びを整えるための術前矯正が必要になります。一般的にその治療期間は1〜2年になります。
・入院・手術(2〜3週間)
入院する医療機関によっても異なりますが、通常は手術の2〜7日前に入院し、術前検査の精密検査が必要になります。手術後は10〜14日の術後管理が行われます。
・術後矯正(6ヶ月〜1年)
手術後3〜4週間はお口が開けられず、十分には噛めない状態が続きますので、顎の筋肉が弱まるため開口訓練などのトレーニングが必要になります。術後は、そのようなリハビリテーションと噛み合わせの細かな調整を図るための術後矯正に6ヵ月から1年を要します。
・保定・メインテナンス(5年〜)
まず保定に入ったところで、手術時に切離したあごの骨を固定するために用いた金属製のミニプレートをすべて除去します。そのためには、日帰りあるいは一泊入院による撤去手術が必要になります(吸収性のプレートを使用した場合は、この手術の必要はありません)。
顎矯正手術後のあごの骨の後戻りはほとんどありませんが、矯正治療で動かした歯は元の位置に戻ろうとする傾向があります。そこで、後戻りを防ぐために「保定装置」が必要になります。当センターの場合は、上顎には取り外し可能なプレートタイプのものを、下顎には歯の裏側に細いワイヤーを接着するタイプのものを用いています。そして、すべての患者さんに術後5年間のアアフターケアを行っています。
外科的矯正の治療費
本センターは、指定自立支援医療機関(育成医療、更正医療)で、現在は顎口腔機能診断施設として申請中であることから、近い将来に健康保険の適用が可能になります。
外科矯正治療費、術前・術後の矯正治療費、入院費等を全て含んだ治療費の目安は約50〜60万円です。しかし高額療養費制度を利用すれば、80,100円を超える治療費が返還されます。
この制度を利用するためには、以下のような条件をクリアする必要があります。
1.同一病院で支払った1ヶ月の医療費が80,100円を超えること。
2.国民健康保険または社会保険に加入していること。
3.本人が申請を行うこと。
ほとんどの顎矯正手術にも健康保険が適用されます。(最近、厚労省から、術前矯正が健康保険で行われている場合には、顎矯正手術にも健康保険が適用されますが、術前矯正が自費の場合には顎矯正手術も自費になるという通達がなされましたので、注意が必要です。)
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