矯正歯科

おとなの矯正治療

インプラント矯正

矯正治療は、生体内で歯を動かす生理的なメカニズムを利用して行なわれます。簡単に言うと、歯に持続的な力を加えることで歯を動かすことができるのです。この現象は、歯と歯槽骨に介在している歯根膜と呼ばれる組織が存在するからです。

今までに歯に力を加える方法として、歯と歯どうしで引っ張り合いをさせたり、お口の外から顎外固定装置(ヘッドギアーやフェイスマスクなど)を使用して歯を引っ張ったりしてきました。歯と歯どうしの引っ張り合いでは、ニュートン力学の第3法則(作用と反作用)により、どちらの歯にも歯の移動が生じてしまいます。この作用と反作用をコントロールするために、インプラント矯正が開発されるまで、矯正歯科医は大変な苦労をしてきました。また、患者さんも治療を成功させるために顎外固定装置をしっかり使うように協力を求められてきました。

1960年代にスウェーデンのブローネマルクによって生体親和性のあるチタン製インプラントが開発されるに伴い、矯正歯科においてもそれを固定源に利用する試みがなされるようになりました。そして1990年代に入って、顎の骨折などに用いられていた骨接合用のチタンミニプレートやミニスクリューを矯正用固定源として利用して、歯を移動することが日常的に行われるようになってきました。そのような矯正治療法をインプラント矯正あるいはTADs (Temporary Anchorage Devices)と呼ぶようになりました。

インプラント矯正の原理は、顎骨や歯槽骨に埋め込まれたインプラントが歯とは異なり歯根膜という組織を持たないため、力を与えてもそれ自体は動くことがないというところにあります。したがって、伝統的な矯正治療において悩みの種であった反作用の影響に煩わせることなく、目的の部位まで予知的に歯を移動して、治療目標を確実に達成することができるようになりました。矯正歯科臨床においてはまさに革命的なことでした。

インプラントの種類

インプラントには多くの種類がありますが、現在の主流は以下の2つのタイプです。

1)ミニプレート

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骨接合用のチタンプレートを応用したもので、SAS (Skeletal Anchorage System)として頻用されている。ミニプレートは純チタン製で、歯列の外側の皮質骨表面にミニスクリュー(直径2 mm×長さ5 mm)2~3本で固定。あらゆる歯の移動を妨げることがないことから、きわめて応用範囲が広い。脱落や動揺の頻度はきわめて低いという利点はあるものの、埋入後の顔の腫れがあり、10%程度の患者さんに感染が認められることが難点である。

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2)ミニスクリュー

直径1~2mm、長さ6~10mmの骨接合用のスクリューを応用。材質は、純チタンやチタン合金でできている。歯根と歯根の間や口蓋などに埋入。スクリューの位置によっては、歯の移動に制限が出ることから、加強固定(抜歯症例の固定源)として用いられることが多い。プレートタイプよりも埋入が簡単で、外科的侵襲も少ないが、脱落頻度が比較的高いのが難点である。

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インプラント矯正の利点欠点

●利点
今まで難しかった歯の移動ができるようになった
患者さんがお口の外にでる装置(顎外固定装置)を使う必要性がなくなる
(患者さんの治療への協力が最小限になる)
歯を抜く必要性の減少
外科矯正治療を回避できることがある
治療の短期間化

●欠点
外科的処置が必要
脱落の可能性がある
感染すると膿んだり、顔が腫れたりすることがある
治療終了後に撤去する必要がある

インプラント矯正は、欠点を持ち合わせていますが、それ以上に利点から得られるものが非常に多く、患者さんたちの治療満足度をよりいっそう向上させます。

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